2017年12月23日

補充遺言とは? / 行政書士だけでは食えない今の時代を生き抜くためのヒントは孫子の兵法にあり


遺言書は、遺産を相続させようとしている相手、あるいは遺贈しようとしている相手よりも、あなたの方が、先に亡くなることを前提にして作成するものです。

あなたよりも先に亡くなった人に対して、相続させるとか、遺贈するという趣旨の遺言を書いたところで、そのような遺言は効力を生じません。

ここで問題になるのが、遺言書を作成した後で、遺産を相続させよう・遺贈しようとしていた相手が、あなたよりも先に亡くなってしまった場合です。



その場合、どうしたらいいのか?

一つの方法は、すでにある遺言書を破棄して、新たに遺言書を作成することです。

自筆証書遺言は、何度でも、破棄して、新たに書き直すことができるだろうことは、想像できると思います。

民法にも次のような規定があります。

(遺言の撤回)
第千二十二条  遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
第千二十四条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

古い自筆証書遺言を裁断したうえで、新たに自筆証書遺言を書けばいいわけです。



公正証書遺言で書いていた場合はどうか?

公正証書遺言も破棄することができます。新たに、自筆証書遺言を作成すれば、それが最新の遺言書になります。

しかし、公正証書遺言は、原本が公証人役場に保管されているので、手元にある公正証書遺言(正本・謄本)を破棄したところで、この世に存在しないものとすることはできません。

公正証書遺言の原本が公証人役場に保管されているのは、手元にある公正証書遺言(正本・謄本)が滅失したとか書き換えられたような場合に備えるためだからです。

つまり、新たな自筆証書遺言と古い公正証書遺言が存在してしまうことになります。

そのような場合、どちらが優先するのか?

形式も整っていて、公証人が関与した公正証書遺言が優先する。と考える方もいるかもしれません。

しかし、そうではありません。民法にはこうあります。

(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条  前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
2  前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
この規定は、古い遺言が公正証書遺言で為された場合であっても、適用されるものです。新たな自筆証書遺言の方が優先されるということです。

どっちが、新しい遺言なのか分からないじゃないかと思う方もいるかもしれませんが、いつ作成したのかを明確にするために、遺言書には、遺言をした日付を記載することとされています。

自筆証書遺言として認められるための要件をもう一度確認しておきましょう。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2  自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

『その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。』とはっきり書かれています。



万が一の時は、遺言書を書き直せばいいわけですが、その時、あなたが、遺言書を作成できる状態にあるとは限りません。

もしかしたら、あなたも、病院に入院していて、意識が朦朧としている状態かもしれません。

周りの方が、あなたの病状を気遣い、あなたが遺産を受け継がせようとしていた相手が、不慮の事故などで亡くなってしまったことを知らせないかもしれません。

何より、病院に入院している時に作成した遺言書は、有効、無効を巡って、争いが起きやすいことは、先に述べたとおりです。

そのような状況の下で、古い遺言書を破棄して、新たな遺言書を作成するのは難しいと言わざるを得ません。



では、どうしたらいいか?

最初に、遺言書を作成したときに、遺産を受け継がせよう考えている相手に万が一の事があった場合のことを想定した上で、遺言書を作成するということです。

想定外だった……。ということにならないように、あらゆる事態を想定しておくのです。

例えば、あなたが遺産を甥や姪に遺産を受け継がせよう考えているとしましょう。

法定相続の場合、甥や姪が相続人になるのは、あなたに子供や孫がおらず、あなたの親兄弟が亡くなっている場合に、あなたの兄弟の代襲相続人として相続することができるのみです。

そして、忘れてはならないのが、甥や姪の子供は、あなたの遺産を代襲相続することができないということです。

甥や姪に相続させよう。甥や姪に万が一のことがあったら、その子供に相続させよう。

そのように考えているならば、遺言書に、その旨を書き記しておくことが肝要です。

具体的には……、

1、遺言者は、甥 甲野太郎に遺言者の有する財産の一切を相続させる。

2、万が一、遺言者よりも前、又は同時に甥 甲野太郎が死亡した時は、遺言者は、甲野太郎の長男 甲野小太郎に遺言者の有する財産の一切を遺贈する。

このような書き方をするのが、補充遺言と言います。

自分の子供世代の者が自分よりも先に亡くなることを想定して、万が一の時は、孫世代の者へ相続させるという二段階の補充遺言を作成しておけば、とりあえずは、問題ないと思います。

それでも不安だ。

例えば、もしも、甲野太郎と甲野小太郎が同じ車で出かけて二人ども事故死したらどうするんだ?

とお考えでしたら、さらに、補充遺言を書き加えることもできます。

その場合は、誰が亡くなった場合は誰に相続させる・遺贈するのか、の繋がりを読み取れるようにしておかなければなりません。

ただ、あまり書き過ぎると、遺言書の解釈を巡って、争いの種になってしまうことは必定です。

補充遺言は、二段階までが現実的な限度だと心得ておくべきでしょう。



※参考条文

公証人法
第二十五条  公証人ノ作成シタル証書ノ原本及其ノ附属書類、第五十八条ノ二第四項ノ規定ニ依リ公証人ノ保存スル証書及其ノ附属書類、第六十二条ノ三第三項ノ規定ニ依リ公証人ノ保存スル定款及其ノ附属書類並法令ニ依リ公証人ノ調製シタル帳簿ハ事変ヲ避クル為ニスル場合ヲ除クノ外之ヲ役場外ニ持出スコトヲ得ス但シ裁判所ノ命令又ハ嘱託アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
○2 前項ノ書類ノ保存及廃毀ニ関スル規程ハ法務大臣之ヲ定ム

※第五十八条ノ二  公証人私署証書ニ認証ヲ与フル場合ニ於テ当事者其ノ面前ニ於テ証書ノ記載ノ真実ナルコトヲ宣誓シタル上証書ニ署名若ハ捺印シ又ハ証書ノ署名若ハ捺印ヲ自認シタルトキハ其ノ旨ヲ記載シテ之ヲ為スコトヲ要ス
○2 前項ノ認証ノ嘱託ハ証書二通ヲ提出シテ之ヲ為スコトヲ要ス
○3 第一項ノ認証ノ嘱託ハ代理人ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得ズ
○4 公証人ハ第一項ノ規定ニ依ル記載ヲ為シタル証書ノ中一通ヲ自ラ保存シ他ノ一通ヲ嘱託人ニ還付スルコトヲ要ス



※民法 代襲相続について

(解説)

第八百八十九条2項には、第八百八十七条2項の規定のみを準用すると定めており、3項を準用するとはしていない。

つまり、被相続人の兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その子供は代襲相続するが、孫は代襲相続できないということ。

これは、被相続人とは、血縁関係の薄い者が相続人となる『笑う相続人』を防止するためとされている。

(法定相続分)
第九百条  同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四  子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

(代襲相続人の相続分)
第九百一条  第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2  前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。

(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条  被相続人の子は、相続人となる。
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第八百八十九条  次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一  被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二  被相続人の兄弟姉妹
2  第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合について準用する。

※(相続人の欠格事由)
第八百九十一条  次に掲げる者は、相続人となることができない。
一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者



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posted by 大滝七夕 at 19:12| 実務のヒント